恋してピューピル!<過去編>



「・・・・ん・・・・」


浅い意識の中で聞こえた自分の声に、俺は重い瞼を押し上げる。

ああ、朝か、なんて思いながら身体を起こす。今、何時だ・・・・?

髪をかきながら、欠伸を漏らして時計を見る。

時計の二つの針は10時35分を指していた・・・・10時半?!


「遅刻・・・・ッ!」


・・・・今日第二土曜だっけ。休みだ、学校・・・・。

もう一度ベッドに戻ろうと身体を倒したとき、隣で寝こける有岡が目に入った。

よく寝て、・・・・・・・・ん?

確かに昨晩獣みたいに男の俺を求めたこの男は、確かに俺の恋人の有岡だったはずだ。

そうだな、まあ顔は普通にいいな。髪は赤に近い茶色で、若干長い。

背が高いから、ガタイもいいな。スポーツすんの好きだっつってたし。

だが、俺の隣にいるこいつは、誰だ。

有岡によく似た顔、でも大人びてる?髪も短い。背は多分さらに高くて、身体つきもいい。

・・・・誰だこいつ。


「んー・・・・?かつひこさん・・・・?おれ、今日は仕事休みだって言っただろ・・・・」


大きな手が俺の腕を掴んで、その広い胸に引き寄せられた!ってそれどころじゃなくて!

誰だこいつ!有岡は?!つーかどうやって入って来たんだ?!こいつ有岡どこにやったんだ?!!


「・・・・ん?」


男は訝しげな声を上げて目を開けて俺を見た。

ぱちくりと目を瞬いて、驚いたように丸くして俺を見つめる。

それに、俺ははっと我に返った。

ベッドから転がるように這い出て、壁際まで後退りして男に指を突きつける!


「な、何だよお前!どっから入った!有岡はどこ行ったんだッ!!」


こ、事と次第によっちゃ、警察・・・・っ!勝てるかな、俺・・・・。

・・・・あれ、でも、こいつさっき俺のこと「勝彦さん」って言ったよな・・・・?

男はベッドの上に座って、じっくり俺を眺めて、部屋を見渡して、また俺を見た。


「勝彦さん、今何歳?」
「は?!」
「いいから、何歳?」
「・・・・に、26・・・・」


な、何なんだよ・・・・歳なんか関係あんのか・・・・?

男はその言葉に何を納得したのか、あーと一人で呟いて笑顔で俺を見た。


「俺有岡だよ!有岡紅!まあ26の有岡紅だけどね!!」


固まった、って、こういうこと言うんだろうなぁ・・・・。

・・・・こいつ、頭大丈夫か?





恋してピューピル!<過去編>





「・・・・で?お前が十年後の有岡だって証明するものは?」
俺の愛


あまりにも自信満々に言うもんだから、思いっきり頭に肘を落としてやったら男は悲鳴を上げて頭を抱え込んだ。

・・・・確かに言うことは有岡そっくりだな・・・・。

男は頭を押さえたまま涙目で俺を睨み上げた。


「いってー・・・・あーそう!信じないって言うのか!」
「信じる馬鹿がいると思ってんのか?」
「あっそう!じゃあわからせてやるよ!!」


は?何・・・・、

一瞬俺が油断した瞬間、突然腕を掴まれて勢いよく引っ張られた!

もう片方の手が俺の顎を掴んで、無理矢理唇を塞がれる!!


「んむ・・・・ッ!!」


咄嗟に肩を掴んだけど、俺の力じゃこの大きな肩はびくともしなかった。

顎を掴んでいた手が、髪ごと俺の頭を掴んでさらに深く唇を合わせる!


「ん、ふ、ぐ・・・・ッ!く、はッ!」


空気を求めて口を開けた瞬間、ぬるりとしたものが俺の口内へ入りこむ!

それが男の舌だと理解したときには、俺はもう抵抗する力さえ奪われていた。

唾液を流し込まれ、舌を絡みとられ、強く吸い上げられるその感覚に、俺の腰ががくがくと震える。


「ふ、ん、んんッ!は、あ、ん・・・・ふ、んぅ・・・・っ」


や、ばい・・・・頭・・・・おかしくなりそ・・・・気持ち、イ・・・・っ!

身体から勝手に、力が抜けていく。

頭も、心も、身体も、すべてが目の前にいるこいつが有岡だと俺に告げた。

唇の感触も、舌の感触も、匂いも、全部、俺が好きな有岡のモノだ。

俺の頭を掴んでいた手が、いつの間にか俺の腰に回っていた。

絡め取られた舌を引き寄せられて甘噛みされる感覚に、俺は思わず喘いだ。


「勝彦さん、こうされんの好きだもんね。あーあ、付き合いだした頃から知ってたらなぁ」
「は、あ、あ・・・・そん、な・・・・知らな・・・・っ」


一度だって有岡にこんなことされたことないのに、何で俺は感じてんだ。

やばい、これ以上は、駄目だ。流される。


「や、あ、も、やめ・・・・わかったから・・・・っ」
「何言ってんの・・・・これからが本番だろ?」


にやりと笑った気配に、俺の背筋に寒気が走った!

渾身の力を振り絞って肩を押し返して、俺は勢いよく後退る!

十年後の有岡は、おろ、と俺を見て、笑った。


「必死だね」
「な・・・・ッ!」
「そりゃそうだろね。目の前にいるのは、まだ付き合いだして半年も経たない恋人の十年後だもんな」


にやっと笑ったその顔に、俺は思わず口元を腕で覆った。

やばい、俺、絶対今顔赤い・・・・っ!


「今はまだSEX下手でも、十年も経ちゃ・・・・なあ?」
「・・・・ッ!」


ぎろりと睨むと、十年後の有岡は楽しそうに笑った。

こ、の野郎・・・・ッ!!

何か・・・・何か・・・・ッ!

有岡のくせにこの余裕っぷりがムカつく・・・・っ!!

十年後の有岡はにやにや笑いながら俺を見下ろした。

この野郎・・・・まだ身長伸びんのかよ・・・・。


「・・・・何だよ」
「ん?いーや、別に?」


別にって顔してねえじゃねえか!クソ腹の立つ!!

ぶつぶつ呟く俺に目を細めて、十年後の有岡は俺に手を差し出す。


「とりあえずさ、何か着るもん出してくんない?」
「は?」
「ほら」


そう言ってベッドに座ったままだった十年後の有岡は、ぴらりと布団を捲った。

とりあえず俺は、自分がものすごい顔をしたのだけはわかった。





「なー、勝彦さーん、服これしかなかったの?」


そう言って十年後の有岡はひょっこりとキッチンを覗き込んだ。

昼飯の準備をしていた俺はその声に振り返って、盛大に噴き出した。

有岡が前に1サイズ間違えて買った、袖に水色のラインが入った黒のジャージ。

今はでかくて着る気もしないようだが、十年経てば逆に小さくなったようだ。

ぴちぴちで見苦しい、ということはなかったが、上下とも7分丈みたいになっている。


「そ、そんな笑うー?」
「い、いや、別に・・・・ッ」


必死で笑いを堪える俺に、十年後の有岡は不機嫌そうに眉を顰めた。

俺は一つ咳払いをして、何とかこみ上げる笑いを抑え込んだ。

服装こそはカッコ悪いが、やっぱり歳をとった分大人の魅力ってのが備わってるようだ。

恋人の贔屓目を抜いても、男前だ。


「何作ってんの?サンドイッチ?」
「昨日お前が『明日はサンドイッチね』って言ってたから」


俺の手元を覗き込んだ有岡に、俺もそっちに視線を戻す。

そのとき、ふわりと香った香水の匂いに、俺の肩がびくりと跳ねた。

決して嫌な臭いではなくむしろ爽やかな香りに、俺の顔が段々熱くなっていく。

耳をくすぐる、今よりもう少し低くなった声。

何で、有岡、なのに、こんな意識してんだ・・・・。

急に手を止めた俺を不思議に思った十年後の有岡が俺の顔を見て、ふっと笑ったことには気付かなかった。


「どうしたの?勝彦さん・・・・」
「ひ・・・・っ」


急に耳元で低く囁かれ、俺の肩がびくりと跳ねた。

思わず逃げようと足を動かした瞬間、俺を閉じ込めるように片腕が俺の腹に回り、もう片腕を流し台を押さえる。

耳元で心臓がドキドキ早鐘を打ってるみたいだ。


「サンドイッチ、一緒に作る?」


耳にふっと吹きかけられた吐息に、もう一度俺の肩が跳ねる。

恐る恐る振り返ると、大人になった有岡が、大人の顔でそっと微笑んだ。


「あ、りお・・・・か・・・・」
「紅、だよ。勝彦さん・・・・」
「・・・・こ・・・・こ、ぉ・・・・だ、め・・・・」


俺の腹に回った腕をぎゅっと握ると、十年後の有岡は、紅はふっと笑って目を細めた。

Tシャツの裾を捲り上げる手を、必死で押さえる。

そんな抵抗も虚しく、俺のTシャツに潜り込んだ温かい手に、俺の身体がびくりと震える。

耳を甘噛みされ、首筋を舌がねっとりと這う。


「ひ、ぅ・・・・ッ」


首筋をくすぐるような舌先の動きに、俺は思わずもう片方の腕を上げる。

その手で抵抗する前に、俺の身体を這い回っている手とは逆の手に捕らえられる。

俺の手を這い回った手が、ゆっくりと指に自分の指を絡めてくる。

頬に押し付けられる唇から逃げようと顔を反らしたら、俺の指に絡みついた手が離れて、逆手で俺の頬を押さえた。


「何で逃げるの。逃げちゃだーめ」
「ひ・・・・は、ぁ、あ・・・・んんっ」


耳を舌の表面で舐められ、縁を舌先でゆっくりと撫でられ、耳尻を甘噛みされる。

ふらついた足の間に膝が割り入って、ぐっと力を込められた。

俺の身体を這い回ってた手が段々上に上がり、固くなった乳首をきゅっと摘まんだ。


「はあッ!あ、あっ、んっ・・・・は、あ、あ・・・・ッ」
「可愛いね、勝彦・・・・」


耳元で低く囁かれ、首筋がぞわりと粟立つ。

俺の恋人の有岡だ。それはわかってる。でもやっぱり、「有岡」じゃない。

後ろめたさに、泣きたくなってきた。

だってこいつは、「今の有岡」じゃない。


「何考えてるの?」
「ひぅッ?!」
「俺以外のコト考えちゃやだよ」


突然股間を握られ、俺は目を見開いて引きつった声を上げた。

そのまま細長い指がジーンズの留め具を外して、ジッパーをゆっくりと下ろしていく。

目尻に、じんわりと涙が滲んだのがわかった。


「だ、だめ・・・・有岡・・・・ッ」
「紅だよ、勝彦」


大きな手で直接包み込まれ、俺の身体がびくりと跳ねる。

ゆるゆると俺のモノを扱きだした手から与えられる快感に耐える俺に、紅は俺の耳元でふっと笑った。

掌で包み込まれ、その温かい表面で擦られる感覚に、俺は喉を反らせた。

その喉に唇を寄せられ、ちゅっと音を立てて吸い上げられる。

ちりっと首筋に走った痛みに、俺は思わず声を漏らした。


「あ、こ、こぉ・・・・だ、め・・・・ッ」
「可愛いな・・・・イッていいよ」


大きな手が、俺のモノを一層激しく扱く!

親指で竿を擦られ、指の脇で括れを擦り上げられ、亀頭を指で腹で抉られる!


「ひっ、う、ん・・・・ッ」










「いやーやっぱ腹減ってると普段より格段に美味いよなー!」


二人で作ったサンドイッチを食べながら、十年後の有岡・・・・紅は満足そうな声を上げた。

俺はと言えば、紅から距離を取ってもそもそとサンドイッチを食ってる。

・・・・だって、ぶっちゃけ今会ったばっかで、一人だけ、その、イカされて、

どんな顔しろっつーんだよ!

膝を抱えて、顔を伏せてもそもそサンドイッチをちょびちょび食ってる俺を見て、紅は眉を寄せる。


「ねえ、何でそんな距離取るわけ?」
「えッ?!べ、別に・・・・」
「ふぅーん?」


急に顔を近付けられびくっとした俺に、紅は不機嫌そうに眉を寄せる。

こういう顔は、今も未来も変わらないんだ。

だ、駄目だ・・・・何か、どきどき、して・・・・顔見れない・・・・。

よく考えたら、今俺とこいつって、同い年、なんだよな。

今の有岡だったらすっげー喜びそうだな・・・・。

ちらりと紅を見て、俺はやっとソファに頬杖をついてじっと俺を眺めてる紅に気付いた。


「?何・・・・?」
「ん?いや、いざ同い年になると、何か不思議な感じするよなぁって」


嬉しそうに笑って、紅は手を伸ばすとすっと俺の頬に触れた。

びくりと身体を震わせた俺に、そっと目を細める。


「・・・・ああ、やっぱ可愛いな・・・・」


その言葉に、俺の顔が一気に熱くなった!

だって、そんな、大人の顔で、うっすら微笑まれて、低い声で囁かれたら・・・・っ!

思わず顔を伏せると、頬に触れた手が俺の顎を持ち上げた。


「伏せちゃやだよ。・・・・よく見せて?」
「あ、で、あの・・・・ッ」


また顎を持ち上げられて、唇を寄せられる。

俺の目をまっすぐ見つめるその目から、目を反らせられない。

今、ここでキスされたら、絶対最後まで流される。


「あ・・・・い、いや・・・・」
「何で?そんなこと言われたら、傷つくよ?」


もう片方の手が、服の上から俺の腹を撫でて、Tシャツの中に忍び込む。

もう駄目だと思った俺は、強く強く目を閉じた。

諦めた俺を押し倒そうと紅が身を乗り出したとき、その身体がガラスのローテーブルに当たった。

その上に置いていたテレビのリモコンが音を立ててフローリングに落ちて、その拍子にテレビがついた。

テレビから聞こえてきた賑やかな声に、押し倒した俺に覆い被さってた紅の意識がそっちに反れた。


「あ、この芸人に俺の時代じゃ有名司会者なんだぜ」
「え?そ、そうなのか?」


テレビに映る駆け出しの芸人を指差して、紅は楽しそうに笑った。

俺は何とか紅の下から這い出して、ほっと胸を撫で下ろした。

な、何でだろう・・・・すっげー悪いコトしてる気がする・・・・。

テレビを観てけらけら笑ってる紅を、俺は横目でちらりと見た。

好きな気持ちに違いはない。でも、やっぱり俺の中で「今の有岡」と「十年後の有岡」は違うんだ。


「はーおっかしッ!そういえばこんな風にテレビ観るのって結婚してからあんまないなぁ」
「・・・・え?」


今・・・・何て・・・・結婚・・・・?

そのとき、俺は確かに紅の左手の薬指に光ったシルバーの指輪を見た。


「ん?どしたの?」
「・・・・結婚、したのか?」
「え?まあそりゃ26にもなれば、あ、ごめん」


今の俺も26であることを思い出したのか、紅は慌てて謝った。

けど俺はそんなことを気に留めることもできなかった。

殴られたような衝撃に、頭が上手く動かない。

結婚、そうか、そうだよな。

別に結婚しなくても子どもを生まなくても構わない俺と違って、紅は結婚も後継ぎも求められる存在だ。

大体、俺はそれを前提にしてこいつと付き合ってるんじゃないか

有岡がちゃんと目を覚ました、それだけだ。

俺はショックを受けるんじゃなくて、喜ぶところだろう?

ぷつん、と小さな音を立ててテレビの画面が消える。

ああ、馬鹿だ、俺、


「おいで・・・・勝彦・・・・」


こいつがもう違う奴のモノだっていうのに、それでも好きなんだ。

無意識に差し伸べた手を掴まれて、ソファに押し倒される。

俺の首筋を優しく撫でるその唇に、泣きそうになった。

ちゅ、と小さく音を立てて吸いついた唇に、小さな痛みを与えられる。

Tシャツの中で大きな手が身体を這い回る感覚に、俺は背を反らせた。

器用に片手で服を脱がされて、ぎゅっと抱きしめられる。

熱い舌が俺の首筋を舐めて、鎖骨をくすぐって、やがて固くなった乳首に辿りついた。


「ひ、ぅ・・・・っ」


舌で転がされ、歯で軽く噛まれる感覚に、俺の喉から引きつった声が漏れる。

俺の背中を這う手が、履き替えたズボンを掴んで、ずるりと下着ごと俺の足から引き抜く。

足を撫でる手を思わず掴むと、窘められるようにキスされた。

ナカへ捻じ込まれた舌が俺の舌に絡みついて、強く吸い上げられる。

俺の足を撫でていた手が、膝裏を持ち上げて足を広げさせた。

緩く反応していた俺のモノに手をかけられ、軽く扱かれる。

親指の腹で先端を抉られる感覚に、俺は濃厚なキスを受けながら、その首に必死でしがみついた。


「ん、んんっ、ん、ふ、ん・・・・ッ」


ぴくぴくと身体を震わしながら、俺は紅の首にまわした腕に力を込めた。

固く閉ざした瞼の向こうで、紅が目を細めたのが何となくわかった。

紅は俺の唇を名残惜しそうに舐めながら離して、身体を屈めた。

無意識に閉じようとする足を無理矢理割り開かれ、さっきまで扱かれてたそれを咥えこまれる。

熱い舌に舐め上げられ、吸い上げられる感覚に、俺の身体がびくりと跳ねた。


「ひ、ひ・・・・ぅ、んん!あ、あ、あッ」


必死で手を伸ばして、力の入らない手で紅の髪を握りしめた。

引き剥がしたいのに、与えられる快感に力が入らない。

震える手で、ただ紅の短い赤みがかった茶色の髪を、握りしめることしかできなかった。


「ひ、は、あ、あ、あ、ぅ、だ、め、こ・・・・い、イク、イっちゃうから・・・・ッ」


俺のモノを咥えこんだまま、紅はちらりと上目遣いに俺を見た。

ふ、と目を細めて、先端を咥えこんで強く吸い上げた。

その刺激に、俺は背を反らすと声にならない悲鳴を上げた!

俺が出したモノを簡単に飲み下して、紅はゆっくりと俺のモノから口を離す。

浅く早い呼吸で必死に息をする俺を覗き込んで、汗で額に張り付いた前髪をかき上げられながらそこにキスをされた。


「もうイったの?早いね」
「はっ、はっ、は・・・・っ」
「自分ばっかり気持ちヨくて、イってばっかで、ずるいなぁ」


俺はいまいち焦点が定まらない目で、紅を見上げた。

紅は俺を見て、ニィと笑みを浮かべる。


「なあ?勝彦?」


そんな風に微笑まれて、見つめられたら、嫌だなんて言えない。

俺が身体を起こすと、紅は満足そうに目を細めて背もたれにもたれかかった。

ソファから降りて、座ったまま俺を見下ろしてる紅のジャージのズボンに手をかける。

下着と一緒にそれを引き下ろすと、すでに硬くなったモノが俺の目の前に現れた。

・・・・俺、これを挿れられんのか?

今のよりもう一回りほどでかくなってるそれに、俺は冷たいものが背筋を伝った気がした。

ただでさえ今の有岡のモノでさえでかい上に痛いのに、これじゃあもう裂けるかもしれない。


「そんな見られたら照れるなぁ」


上から降ってきた声にはっと我に返った。

そろそろと上を見上げると、微笑みながら俺を見つめる紅と目が合った。

俺は唾を飲み込むと、恐る恐る紅のモノへ舌を伸ばす。

ちろちろと舌を割れ目に、括れに、裏筋に這わすと、押し殺したような声が聞こえた。

俺はもう一度唾を飲み込むと、怖々ながら口を開けてそれを咥えた。


「う、ぐ・・・・ッ」


やっぱ、苦し・・・・っ!

今のでさえ咥えこんだら苦しいのに・・・・大体もう育たなくてもいいだろ。

明日顎痛くなりそうだな、なんて頭の片隅で考えてるあたりまだ余裕だな、俺。

紅は俺を見下ろして、俺のモノで汚れた指先をぺろりと舐めた。


「っ、は・・・・すっげー気持ちイー・・・・」


そう小さく呟いて、紅は俺の頬を指先で撫でた。

口の中に溜まった紅の先走りと自分の唾液を呑み込んで、もう一度舌を這わせる。

飲み込み切れない根元を手で扱きながら、裏筋に舌を這わせる。

ちゅう、と吸いついて、もう一度頭から咥えこんだ。


「ん、んぅっ、ん、んふ・・・・んっ」
「っ、はぁ・・・・出すよ、勝彦」
「んぐッ?!」


その言葉に驚いて口を離そうとしたら、髪を掴まれて頭を押さえこまれた!

俺が目を見開いたと同時に、紅のモノから滾りが弾ける!


「んぅ!んんーッ!!」


口のナカに大量に流し込まれた熱いそれに、俺は思わず固く目を閉じた!

口を離したくても、紅が俺の頭を押さえつけてる所為で動くことさえできない。

懇願の目で見上げると、紅は余裕のない笑みを浮かべたまま唇を舐めた。


「萩原とのこと、終わってるよな?だったら飲めるだろ?」
「・・・・ッ!ん、ぅ・・・・っ」


有無を言わせないその強い口調に、どうすることもできない。

脳裏に浮かんだ16の有岡にごめん、と呟いて、

俺は喉を鳴らした。


「・・・・げほっ」
「ああ、よくできたね」


満足そうにそう言って、紅は俺の輪郭をなぞるように指先で撫でた。

俺は後ろめたさに、顔を上げることができない。

本気の相手がいるのに浮気してる奴って、こういう気分なのかな・・・・。

じっと顔を伏せてる俺を見て、紅が安心したように笑ったのに、気付かなかった。


「浮気してるみたいで後ろめたい?」
「えっ」


急に腕を掴まれたと思ったら、力任せに引っ張り上げられた。

向かい合う形で膝の上に座らされ、頬に軽くキスされる。


「ねえ、勝彦?」
「あ・・・・っ」


するりと俺の尻を這った手が、ぐっと割れ目を掴む。

柔らかい肉をぐにぐにと揉まれて、割れ目の窄みを指先で撫でられた。

思わず身体を縮こまらせると、紅は喉の奥で笑って俺の頬を舐めた。


「今の俺だけを見ろ。お前はすべて忘れて、俺に溺れて、俺を求めていればいい」
「そん、な・・・・ッ」
「俺を見ろ。今お前を抱いてるのは、『俺』だ」


耳元で妖しく囁かれるその睦言に、目の前がくらくらした。

重ねられた唇に、俺は胸に確かに罪悪感を感じながらその舌を受け入れる。

紅とのキスに夢中になる俺のナカに浅く捻じ込まれた指先に、びくりと肩が跳ねる。


「あっ・・・・こ、こぉ、ローション、寝室・・・・っ」
「は?何それ、要らない」


紅の言葉に、俺はびっくりして目を見開いた。

驚いて声すら出せない俺を見て、紅はニィと笑う。


「お前、俺のことナメてんの?お前とSEXしだして十年だぜ?十年も経てばテクだって上がんだろ?」
「じゅ、十年って、あッ!」


ずるりと捻じ込まれた指に、俺は背を反らせて声を上げた。

いきなり指を突っ込まれた所為で、圧迫感はいつもより凄かった。


「ん?・・・・ああ、俺は十年経っててもお前はまだ半年だったな」
「はっ、はっ・・・・あっ・・・・じゅ、十年、て・・・・」


俺の声に、紅はん?と言って俺を見上げる。

俺は目に涙を滲ませたまま。身体を小刻みに震わせて紅を見た。


「何?」
「十年、て、だって、お前、結婚・・・・っ、んっ、んんッ!」


俺に問いかけながらも俺のナカをかきまわす指に翻弄されながら、俺は何とか言葉を紡ぐ。

急に増やされた指に言葉は途絶えたが、紅には全部伝わったらしい。

ああ、と呟いて、指先を俺のナカの奥に突きつけた。


「結婚したよ?勝彦と」
「・・・・はぁぁあああッ?!!」


パニックになった俺が叫んだのと同じタイミングで、紅は俺の最奥を突き上げた。

引きつった声を上げて背を反らせた俺を見て、紅は指を引き抜く。

俺のナカから引き抜いた指を舐めて、俺をソファに押し倒す。


「なあ、悪いんだけどもういい?」
「な・・・・っ」
「もう我慢できない」


そう言うが早いか、俺の足を持ち上げて猛ったモノを押し付ける。

待ってと俺が言う前に、先端を浅くナカに捻じ込まれた。


「ひぃッ?!」
「じっとしてろ。動くなよ」


脅すように低く囁いて、紅はゆっくりと俺のナカへ捻じ込んでくる。

俺は紅の肩に必死でしがみついて、圧迫感に耐えようと浅い呼吸を何度も早く繰り返す。

紅のモノにナカを割り開かれる感覚が、どうにもこうにも恥ずかしい。

傷つけないようにだろうその動きが、もどかしかった。


「は、あっ、あっ、あ・・・・ッ」


く、苦しい・・・・苦しい・・・・ッ!

さっき口に咥えた以上に、苦しい。

今の有岡のモノよりずっと、圧迫感が胸に来る。

質量感も、今のモノよりずっと強い。

・・・・こんなこと本人に言ったらめちゃくちゃキレられそうだな。


「あっ、は、はっ・・・・こ、こぉ・・・・ッ」
「・・・・ん?・・・・どうした・・・・?」
「く、苦し・・・・ナカ、いっぱいで、苦しい・・・・ッ」


必死で訴えた俺の言葉に、紅の顔がカァッと赤くなった。

一層大きくなったそれに、俺は首を反らす。

な、何で興奮してんだよ・・・・ッ!

やがて根元まで俺のナカに自分のモノを咥えこませて、紅は俺の上で深く息を吐いた。


「動くから、お前はあんま動くなよ」
「う、うん・・・・」


有岡のくせに偉そうに、と思ったが、やはり裂けるのは怖いので大人しく頷いた。

紅は俺の両足を抱えると、ゆっくりと腰を揺すりだした。

ゆっくりと抜けるぎりぎりまで腰を引いて、ゆっくりと奥にまで押し込む。

ナカの肉が閉じたり開かれたりする感覚がリアルに伝わってきて、羞恥心に泣きそうだった。

紅は抱えていた俺の足を下ろして膝裏を掴むと、ぐいと足を高く持ち上げた。


「ん、ふっ、ん、あ、あ・・・・ッ」
「はあ・・・・勝彦・・・・」


紅のモノがゆっくりと抜き差しされる様を、泣きながら見つめる。

ぐんっと急に勢いよく最奥を突かれ、俺は背を反らせてソファに倒れ込んだ。

紅のモノになんとか慣れてきた俺のそこに、紅は段々激しく腰を揺すりだす。


「ははっ・・・・もういいよな?」


そう言って俺を見て笑うと、余裕のない笑みを浮かべたまま唇を舐めた。

今も先も変わらないその仕草に、胸がぎゅうっと締め付けられた。

俺の足を持ち直して、紅は激しく腰を俺の腰に打ち付けだした。

背を反らせて声を上げた俺に、紅は目を細める。


「ひっ、は、あ、あぅっ!あ、あんッ、あ、あ、アッ!!」


律動の激しさに、ソファが壊れそうな音を立てて軋む。

肌に打ち付けられる肌が、乾いた音を立ててリビングに響いた。

熱く固い肉棒でナカの肉を激しく擦られる感覚に、俺は激しく頭を振った。


「ひ、あ、あっ!あ、ん、んんッ!あ、だ、だめ、く、くるしッ!」


俺は必死で紅のジャージを握りしめて与えられる快感に耐える。

紅は俺の片足を肩に乗せて、さらに俺に向かって身を乗り出す。

一層深いところにまで捻じ込まれたそれに、俺は背を反らした。

紅の肩を必死で掴んでいた俺の腕が、ずるりと落ちる。

もう一度腕を伸ばして、胸元のジャージを握りしめた。


「勝彦、気持ちイ?」
「ひっ、ん、あ、あっ、あッ!」


聞こえてないね、と言って紅が笑ったのはわかった。

いつも以上の質量感と圧迫感にいっぱいいっぱいで、俺は他のことなんか考えられない。

さらに身を乗り出した紅に、俺の喉から引きつった声が漏れた。


「やぁ・・・・ッ!も、むり、くるし、いやっ・・・・いやぁ・・・・っ」
「ははっ、かーわいー・・・・」


俺の顔を覗き込んで暢気に言う紅を睨む。

けどその余裕のない笑みを浮かべたその顔に、胸がきゅんっと締め付けられた。

紅の胸元を握りしめていた手をそれぞれやんわりと解かれて、その手を首にまわされる。


「勝彦、好きだよ、勝彦」
「んっ、く、は・・・・一番、は・・・・『俺』じゃ、ない、くせに・・・・ッ」


俺の言葉に、紅は驚いたように目を見開いた。

その反応に、俺は気をよくして精一杯にやりと笑って見せる。

紅は俺を見下ろして、まいったな、と小さく呟いた。

俺の足をもう一度肩にかけ直して、もう片方の足を抱えて、紅は一層激しく俺を突いた!


「ひっ、は、あ、う、うっ、イ、イク、イク・・・・ッ!」
「っ、は・・・・勝彦・・・・ッ!」
「は、あ、あッ!ありおか、ありおか・・・・っ」


紅に必死で抱きついて、音にならない悲鳴を上げる。

音さえ聞こえなくなるほど頭の中が真っ白にスパークする。

体内に火傷しそうなほどの熱を流し込まれたのを感じた。

紅のキスを額に受けながら、俺は自然に落ちてきた瞼を閉じる。

今も昔もこれからも、世界一愛してるのは勝彦だけだよ、と囁いた紅の声を聞いた気がした。









先生、先生と俺を呼ぶ声が遠くの方で聞こえた気がした。

身体を揺すられる感覚に、浅いところを彷徨ってた俺の意識が段々浮上していく。


「先生、先生ってば。起きてよ先生」
「ん・・・・ありおか・・・・?」


目を開けると、一番に目に入ったのは俺の身体を揺する有岡だった。

まだ眠いと訴える目を擦って、俺は身体を起こす。

身体の節々と腰が痛んで、若干目が覚めた。


「何だよ・・・・今日土曜だろ・・・・」
「違うんだよ先生。今日が今日じゃなくて明日なんだよ」


・・・・は?何言ってんだこいつ。ついに頭おかしくなったか?

そう思ってまじまじと俺の隣に座ってる有岡を見ると、有岡は機嫌悪そうに眉を寄せた。

多分俺が思ったことがわかったんだろう。

携帯の画面をぱかっと開けて有岡が俺に見せてきた。

確かにその画面に表示された日付は、明日のはずだ。


「・・・・土曜どこ行ったんだ?」
「知らないよ」


そう言って肩を竦めた有岡が、いてッと声を上げた。

不思議に思って有岡を見れば、本当に痛そうな顔で何故か自分の肩を見てる。


「どうした?」
「いや、起きてから背中が痛くってさ・・・・」


どうなってる?と聞いてきた有岡の背中を見て、

多分、俺は目を見開いてフリーズした。

有岡の背中には、まるでひっかかれたような爪痕があった。

この傷は、俺もよーく見覚えがある。昔たまにつけられたことあったからな。


「先生?」


黙り込んだ俺に、不思議そうに有岡が声をかける。

俺の中から、静かな怒りがふつふつと湧き出してきた。


「先生、どうしたの?」


本当に不思議そうに俺の顔を覗き込んだ有岡に、俺の怒りが爆発した。


「この、浮気野郎ぉぉおおおおッ!!」
「はぁあッ?!何の話だよ!!」
「しらばっくれんな!こんな爪痕つけられやがって!!さぞかし激しい一晩だったんだろうな昨日は!!」
「ちょっ、マジ何の話、いったァッ!!」
「うるせえ!出て行ってやる!お前なんかもう知るかぁぁああッ!!」
「ちょ!マジ待って先生!ホント、ホント無実だから!待って、ちょ、せんせぇぇええッ!!」



(有岡が無実だったってことを俺が知ったのは、丁度十年後の昨日だった)





<過去編・Fin>
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10000HITから半年以上経ってんのに今更upとかもう俺死ねばいい^^(ホントな)
えーっと、この二人はただひたすらヤってりゃいいじゃんってことで ←
だって26って盛りでしょ?知らんけど。まあ多分有岡は盛りかと思われ☆\(^O^)/
十年後の有岡はヘタレだけど、現代有岡よりドS度増してます^^
つーか同い年になってるから月代にガンガン攻めるよ!責めるよ!(落ち着け)
ただ月代に強気な有岡と弱気な月代が書きたかっただけという(´・ω・`)



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