Non Love Love


部屋に入った瞬間、勢いよく壁に叩きつけられた。

その勢いに一瞬息が止まり、喉に一気に空気が流れ込んでくる。

激しく咳き込むと、目尻に涙が溢れたのがわかった。

痛みや苦しさからではない、これは、

絶対的な、恐怖。

小刻みに震えながら目の前の相手を見上げた。

無表情の中、狂気を宿す瞳が自分を見下ろす。

突然伸びてきた手が胸倉を掴んで、服を一気に引き裂かれた。

宙を舞う糸くずに、目を見開く。


「ひ、酷いよ!今日はシないって言ったから来たのに!」
「うるせえよ。シようとシまいと俺の勝手だろ」


恐怖に怯えながら抗議の声を上げると、冷たい声が返ってきた。

びくりと無意識に肩が震えた。

身体の震えを抑えることができない。

それを見て、嘲笑うような笑みを浮かべる。


「どうしたんだよ、アキラ。何怯えてんだよ」


怯えるアキラを見て、薄く笑う。

服を引きちぎった手が、その蒼白の頬を撫でた。


「俺はお前の恋人だろ?アキラ」
「和、斗・・・・っ」


小刻みに震えながら、酷薄な笑みを浮かべる和斗を見上げる。

恐怖に揺れる瞳を見て、和斗は面白そうに目を細めた。


「俺はお前が俺のこと好きだって言うから付き合ってやったんだぜ?何でそんなに怯えるんだよ」
「お、怯えてなんか・・・・っ」
「そうだよなぁ?怯えてなんかないよなぁ?」


声を震わしながら呟いたアキラに、和斗はにんまりと目を細める。

アキラの表情に浮かぶ恐怖が、深くなった。


「お前は、俺が好きなんだもんなぁ?」


和斗の言葉に、アキラは絶望に似た恐怖に目を見開いた。

放心状態で身体を震わせるアキラに、和斗は楽しげに目を細める。

ああ、楽しいなぁ、こいつは。

昔から変わらない。

昔っから弱虫で泣き虫で、ウザくて目障りで、

いつも俺に頼ってきてマジで迷惑とか思ってたけど、

いきなり俺に「好きだ」なんて言ってきてマジ意味わかんない。

俺はお前なんて大嫌いだよバァカ。

って言ってやろうかと思ったけどやめて、

その代わりにっこり笑って「俺も好きだよ」なんて言ってやれば嬉しそうに笑っちゃってまあ、

ホントバカだよね、お前って。

ホントは好きでも何でもないしっていうかむしろ死ねって思うぐらい大ッ嫌いだけど、俺はこいつを抱いてやってる。

うわー、俺超やさっしー。


「恋人なんだから、抱きたいって思うのは当然だろ?」


和斗はにっこりと微笑んでそう言ってやると、アキラの表情が和らいだ。

破れている服の胸倉を掴んでベッドに突き飛ばす。

ギシッとバネが軋む音と共にアキラの身体に覆いかぶさった。

アキラは咄嗟に閉じた目を開けると、和斗を見上げた。


「か、和斗は、俺のこと、好き?」


怯えながら恐る恐る問いかける。

和斗の表情から一瞬、感情が消えた。

しかしすぐに、にっこりと微笑む。



ああ



「ああ、大好きだよ。アキラ」



大ッ嫌いだよ、バァカ










「ひ、い、いた・・・・ッ!!」


悲鳴にも似たか細いアキラの声に、和斗は目を細めた。

ギシギシと音を立ててベッドが軋む。

和斗を受け入れているアキラのそこからは、血が流れていた。

別に、今日に限ったことではない。

前戯も用意も何もしていない、ローションだけで申しわけ程度だけに濡らすだけだ。

けど、これでいい。

アキラは、「痛いコト」が好きだから。


「か、和斗・・・・い、痛いよ・・・・っ」
「はあ?うるせえよ」


恐る恐る抗議の声を上げたアキラに、和斗は苛々しげに眉を寄せた。

腰を掴んでいた手を放して、力いっぱいアキラの頬を張る。

小気味いい乾いた音とアキラの悲鳴が部屋に響いた。


「てめえは喘いでりゃいいんだよ。余計なこと言うな。殺すぞ」
「う、うん・・・・ごめんね・・・・」


和斗はちッと舌打ちを打って前髪をかき上げた。

謝るぐらいなら最初から言うな。

アキラが和斗を受け入れている場所が、ぐちゅぐちゅと水音を立て始めた。


「あ、あん・・・・あ、あ、あ・・・・ッ」


ぴくぴくと身体を震わせるアキラに、和斗は薄く笑った。

どんなに無理矢理突っ込もうが、アキラは感じるのだ。

付き合い始める前は、一体どれだけの男を受け入れていたのだろうか。

本当に、淫乱だ。


「か、和斗ぉ、和斗ぉ!」
「何だよ?気持ちイイのか?ホントにお前は変態だな、アキラ」


アキラが和斗の首に腕を回し、キスを強請る。

和斗はそれに応えず、アキラを見下ろして薄く笑った。

アキラの細い腰を掴むと、勢いよく打ち付けた。

悲鳴にも似た喘ぎ声を上げるアキラに、ほくそ笑む。

必死だな、と思う。

そんなに俺が好きか。

欠片も気持ちよくなんてないくせに。


「あ、あ、あ・・・・和斗・・・・和斗ぉッ!」
「アキラ、気持ちイイ?」


意地悪げに笑って問う。

痛みに耐え目を固く閉じていたアキラはそれに気付かなかった。

必死で頷くアキラに、酷薄に笑う。

身体は正直なのだから、笑ってしまう。

痛みに萎えているアキラのそれを見て、薄く笑った。


「そう?よかった」


心にもない言葉を吐いて笑ってみせる。

アキラはうっすらと目を開けて、和斗を見上げる。

その貌が、泣きそうに歪んだ。


「う、あ、んあぁッ!、ヒ、い、あッ!!」


和斗の顔が、快感に歪む。

か細い悲鳴を上げたアキラの中へ、和斗は自分の熱を放った。


「は、ああ、あ、あぅ、あ・・・・」


アキラは焦点の合わない視線を宙に泳がせる。

和斗は自身をアキラの中に納めたまま、アキラの身体をうつ伏せに返した。

アキラは目を見開いて悲鳴を上げた。


「あ、あ、あ、か、和斗、和斗ォ!」


アキラの腕を掴んで、後ろに引き寄せる。

空いた逆の手で細い腰を掴んで、激しく打ち付けた。


「あ、ああッ、あああッ!!」


背を反らし、目を見開いてアキラは悲鳴を上げた。

先ほど中に出したものが、ぐちゃぐちゃと卑猥な水音を立てる。


「ふ、ふぁ・・・・ん、んん!あ、あん、あ、あ」


やっと痛みがなくなってきたのだろう、アキラが甘い声を上げ始めた。

その瞳が快楽にとろけている。

後ろに引き寄せた腕が、ひくりと引きつった。

痛みに締め付けていたそこが、快楽に引くつく。


「あ、あん、あ、あ、あ、ッ」


腹に届きそうなほどそそり立ったアキラのそれから、透明の滴が零れた。

アキラが、か細く喘ぐ。

今度は、気持ちイイかと問わなかった。

和斗は冷たい瞳でアキラを見下ろす。

見たいのは、快感に喘ぐアキラではない。

見たいのは、痛みに嘆く、大嫌いな幼馴染の無様な姿。


「ひ、ィ、あ、ああああッ!!」
「・・・・ッ」


アキラが一層、和斗を締め付ける。

細い身体を震わしながら、アキラは精を吐きだした。

和斗は一瞬顔を顰め、中から自身を引き抜いてアキラの背中にぶちまけた。

アキラは浅い息を繰り返し、やがて意識を手放した。










「ひ・・・・ひっく、うっく」


アキラは自分の身体を抱きしめる腕に力を込めた。

和斗は隣でアキラに背を向けて寝息を立てている。

アキラは足を抱え込む腕に顔を埋め、必死で声を押し殺した。

身体の至るところが痛い。

ああ、どうして、

どうしてこんな酷いヒトを好きになってしまったのだろう。

どうして愛してくれないヒトを愛してしまったのだろう。

今まで、多くの男とも女とも付き合った。

みんな自分を愛してくれた、心から、

男でも構わないと言ってくれた男だっていた。

けど、いつだって、

いつだって自分の心は、和斗のモノだった。

和斗に抱かれるたび、身体の傷は増えた。

心の傷も、増えるだけ。

それでも、愛しさは減ってくれない。

いつももうやめにしようと思う。

しかし、和斗に優しくされるたび、微笑んでもらうたびに、

もう少しだけ、もう少しだけと、

自分に嘘を吐いて、叶わない恋に夢を見る。


「う、ひっく、ひ、ぅ、ぅえ・・・・っ」


和斗はうっすらと、目を開けた。

そして、ほくそ笑んだ。

アキラが痛みに上げる悲鳴も好きだが、

やっぱり、あいつが泣いているときの声が一番好きだ。

本当に馬鹿だと思う。

少し優しくしてやれば、後少しだけと、

叶わない恋に夢を見るこいつが、愚かで馬鹿で、ほんの少しだけ愛おしかった。


「アキラ・・・・?どうした・・・・?」


今起きたようなフリをして、そっとアキラの髪を撫でる。

優しく微笑むと、アキラは怯えたように肩を竦めた。


「ごめんな・・・・やっぱ痛かったか?」
「へ、平気だよ・・・・和斗・・・・」


そっか、よかったと、

薄く、目を細める。

アキラの腕を掴んで、引き寄せる。

近づいた唇に、触れるだけのキスを、


「好きだよ、アキラ」


優しく、囁く。

アキラは絶望に目を見開いた。

和斗は、唇を酷薄に歪める。

身体を引きよせ、ベッドに縫い付ける。

身体を震わせながら目を見開くアキラに、そっと囁く。





「愛してる」





さあ、今日も、

愛なき愛で、君を戒めて、





Fin
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ちょっとやりすぎたかなぁなんて思ってないから!!うん、思ってない、思ってない、よ?(聞くな)
や、でもちょっと楽しかったかなぁ、なんて、こともない、よ?
「太陽と海の教室」観ながらしかも泣きながら作りました。製作スタッフさんごめんなさい。
すいません、DVDBOX買います。それで勘弁してください。
これ結構前から作ってたんですけど、一ヶ月ぐらいかかってやっと完成しました。
攻君は和斗(かずと)、受君はアキラですよ。
愛なしを書こうとしたら愛なし+DVになっちゃったよ。
あんま愛なしとか好きじゃないんですけどねー。でもたまーにむしょーに書きたくなるんですよねー。
んで作った後にあちゃー、とか思っちゃうんですよねー。あちゃちゃー。
次は甘々ドエロ書きます。許してね。



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