恋してピューピル!<義弟編前篇>(言葉責・羞恥責・口淫・中出・バック・座位)



「じゃあ今日はオムライスでいい?」
「ああ。着替えたら行く」


楽しそうな有岡の声に、俺も嬉しくなって答えた。

珍しく俺と有岡の帰宅時間が重なって、俺たち二人は一緒に家に帰ってきた。

帰りに昨日見たテレビの特番のオムライスの話になったから、今日の晩飯はオムライスらしい。

俺チキンライスよりバターライスの方が好きだからバターライスがいいなぁ。

とりあえず俺は一回自分の部屋に戻って、洗濯まわして、軽く掃除して、

・・・・ん?有岡の奴、変な顔してどうしたんだ?

有岡は俺の後ろを見て不思議そうな、訝しげな顔をしている。

さっきエレベータの扉が開くときの音がしたから誰か上がってきたんだろうけど。

有岡は一層怪訝そうな顔をして、突然はっと目を見開いた。


「せ、先生!」
「え?」


な、何?

俺が振り返った瞬間、俺の視界には映ったのはいっぱいの白だった。

・・・・・・・・・・は?何、


「てめ・・・・っ」
「兄貴ー!」


有岡の言葉が、久しぶりに聞いた声に消える。

あ、兄貴って、まさか、まさか、


「・・・・透?」
「そうやでわかってくれたん?!めっちゃ久しぶりやん!元気やった?!」


久しぶりに聞いた声は、家を出る頃に始まった声変わりが終わったのか前より低くなっていた。

短い黒髪が、明るい茶髪に変わってたのには驚いたけど。

けれどこのしゃきしゃきした関西弁は、何一つ変わってない。

透、透だ。俺の弟の立川透。義理だけど。

俺に抱きついてた透が有岡に振り返った。

唖然としてる有岡を見て、透は不審そうにじろじろと有岡を眺める。


「・・・・誰?こいつ」
「え?あ、ああ、俺の教え子の有岡だ」
「ふぅーん」


俺の言葉に透は興味なさそうに呟いて有岡をまたじろじろ眺めた。

有岡を見ると、どういうこと?と目で訴えてきた。

えーっと、何て説明するかな。もうシンプルでいいよな。


「有岡、えーっと・・・・こいつ、俺の弟の透だ」


俺の言葉に、有岡は案の定驚愕したように目を見開いた。





恋してピューピル!<義弟編前篇>





「有岡、こいつが俺の弟の立川透」
「はあ・・・・どうも」
「ドーモ」


俺は自分のリビングのガラスのローテーブルを挟んで透を有岡に紹介してた。

な、何でこんなことになってんだ・・・・?

透は俺の隣でローテーブルに頬杖をついて興味なさそうにそっぽを向いてる。行儀悪ぃなぁ。

つーか何でこいつこんな機嫌悪いんだ・・・・?

この短髪で茶髪で猫目のこいつが、俺の弟の立川透。俺の今の父親の連れ子だ。

スーパーの品出しのパートをやってた母さんに、大阪から転勤してきた義父さんが一目惚れしたらしい。

バツイチ子持ちだったけど、こっちは未亡人の子持ちだってことで両方の親の反対も大してなく結婚。

透は有岡と同い年の今高2だから、俺とはちょうど10離れてる。あ、今は9か。こいつはもう17だからな。

高校は黒凰の姉妹校の白鳳に通ってる。俺の母校で、黒凰に赴任する前に働いてたとこ。非常勤だったけど。


「あれ、でも先生、名字・・・・」


有岡の不思議そうな言葉に、俺の肩がぎくりと跳ねた。

思わず透を見ると、別に何ともなさそうな顔をしている。

有岡は俺と透を見て、何となく触れてはいけないと思ったらしい。

正式には、俺も「立川勝彦」だ。戸籍上は。

月代は、お袋が再婚する前の名字、つまり俺の本当の親父の名字だ。

今の父親を尊敬してる、なんて聞こえのいいことを言っておいて、その実関係は上手くいってないんだ。

前の職場の白鳳では、同僚も上司も全員俺の事情を知ってるから「月代」と呼んでくれていた。母校だし、親父の元職場だしな。

当然「立川勝彦」として黒凰に就職してんだから最初は全員「立川先生」と呼んでたんだが、あまりにも俺が反応しないもんで(わざとじゃないんだが)全員が「月代先生」と呼ぶのが暗黙のルールになってる。

・・・・そういえば、有岡にこの話、すんの忘れてたな。そろそろ話すべきなのかもしれない。

俺はわざとらしくも咳払いを一つすると、改めて透に顔を向ける。


「透、こいつは俺が今通ってる学校の生徒の有岡だ」
「・・・・で?何でその生徒さんが、ふっつーに先公ん家上がりこんでんねん」


その言葉に、俺と有岡はぎくっとした!

そーだよ!何で俺当たり前みたいに有岡家に上げてんだよ!

んで何でさも当然のように透に有岡紹介してんだよ!


「こ、こいつ歴史の成績悪くて、家が隣ってこともあって学校に内緒で補講してやってんだよ!」
「そ、そうそう!」
「ふーん?」


はーはは、は・・・・誤魔化せ、てねえなこれ・・・・。

まあ流石に付き合ってる、とまでは読めねえだろ。

異様に重い空気が俺の肩に圧し掛かった。

な、何だろうこの恋人の父親に結婚の許可貰いに来たような重々しさは・・・・っ


「あ、そ、そうだ!な、何かジュースか何か淹れてくるな!悪かったな気ぃ利かなくて!」
「えッ?!」


そう言うなり俺は立ち上がってキッチンに逃げた!

家主が一番に逃げやがっただと?!知るかんなもん!

有岡が何か言いたそうだったが無視だ無視!

とりあえず、何とかあの重い空気から抜け出せたことに溜息。

何で透の奴あんな機嫌悪いんだよ・・・・確かに昔からそういうとこあったけど。

何か飲むものを用意するために冷蔵庫を開ける。うわー・・・・見事に何も入ってねー。

飲むもの・・・・おっ、ラッキー。オレンジジュースはっけーん。

透オレンジジュース好きだったっけ。あれ、グレープだったか?

前に有岡が来たときに出した奴だから、賞味期限・・・・よし見なかったことにしよう。

氷を二つグラスに落としてオレンジ色の液体を並々注ぐ。

有岡はコーヒーがいいよな。・・・・コーヒー豆って賞味期限あったっけ。

コーヒーメーカーにコーヒー豆を入れて、あとは勝手に挽いてくれるのを待つだけ。俺もコーヒーでいいや。

しかし透の奴、見事に機嫌悪かったな。

あいつは昔からそうだ。昔っつーか、会ったときから?

初めて会ったのは、母さんから結婚の話を聞いた二日後で、確かレストランだったな。

俺がそのとき高1になったばっかだったから15だったから・・・・透が5歳のときか。ああ、6だ。4月生まれだからな。

初めて会ったときから俺に懐いてくれた。そりゃもう本当の兄貴並みにだ。

それから一ヶ月後に一緒に住み始めて、透が通ってた小学校は白鳳の近くだったら毎日一緒に登校してた。

そのときからだよなー。あいつ、俺が誰かと一緒にいるといっつも機嫌悪いんだ。

まあ難しいお年頃、ってやつか?・・・・10年間も?お、コーヒー挽けた。

二つマグカップを出してきて、それにコーヒーを注ぐ。おー、いい匂い。

懐いてくれるのはいいが、流石にこの歳になったらもうちょっと抑えてほしいな。

俺にだって一応体裁、ってもんがあるしなぁ。誰だあってないようなもんだっつったの。

白鳳で勤務してた頃だって、俺を見つけたらところ構わず大声で俺を呼んで抱きついてきたしな。

大体有岡といい透といい、何で最近のガキはあんなガタイよくて身長にょきにょき伸びんだよ!

透は有岡よりは少し低いだろうが、立派に兄貴の俺の身長を追い越してる。クソ腹の立つ。

あいつらまだ伸びてんだろうな・・・・。・・・・有岡のコーヒーん中塩入れてやろっかな。

まあそういうわけで、抱きつかれたらよろめくんだよ。誰だ非力っつったの。

しかも思いっきり抱きついてくるから、一回壁に頭強打したことあったな。

大体校長も「弟が入学するんですけど」っつったら「ああ、まあいんじゃね?」って何だよそれ!軽い!

夫婦で同じ職場で勤務できないなら兄弟はどうなんだよ!教師と生徒だったらいいのか?!

まあ俺は元々白鳳で教師したかったんだけど・・・・。

・・・・まあ、黒凰に赴任して、よかった、けど・・・・。

だぁぁあッ!何言ってんだ俺は!馬鹿か!馬鹿だ!

探し出したトレイにガチャンッと音を立ててマグカップ二つとグラスを置いてリビングに戻る。

リビングに戻って俺が一番最初に見たのは、ローテーブルを挟んで睨み合う有岡と透だった。


「な、何やってんだ・・・・?」
「「別に」」


今にも殴りかかりそうな二人に声をかけると、同時にぷいっとそっぽを向いた。

な、何なんだよこいつら・・・・俺がいない間に何があったんだ・・・・?

・・・・ま、いっか。

テーブルにトレイを置いて、オレンジジュースを透の前に置く。


「はい、透。お前オレンジジュース好きだったよな?確か」
「そうやで!覚えとってくれたんやな!おおきに!」


透は満面の笑顔でジュースを飲んだ。あーよかった。

こいつが好きなの確かグレープで、オレンジ嫌いじゃなかったっけって思ってたんだけど。

有岡の分のコーヒーには、角砂糖一つとミルクを一周分。


「はい、有岡」
「ありがと」


俺が差し出したカップを有岡は笑顔で受け取った。

有岡はこれが一番好きなコーヒーの飲み方だからな。

有岡はコーヒーを一口啜って、俺を見た。


「美味しいよ。ありがとう、先生」


笑顔の有岡に笑い返す。有岡のコーヒー作んのは俺の仕事だからな。

俺の分のコーヒーには、うーん。今日はどうすっかな。

角砂糖瓶ごと持ってきたし、とりあえず角砂糖二つと、ミルクをたっぷりと。

んー、コーヒーっつーかカフェオレだな、これ。まあ美味いけど。

つーか透の奴まだ機嫌悪いのかよ、ったく。いい加減にしろよな。


「なあ兄貴!俺今日泊ってってええやろ?!」
「え?!べ、別に、いいけど・・・・」
「よっしゃあ!」


し、まった・・・・突然だったからつい・・・・。

ぎろりとこっちを睨んだ有岡の顔が見れなくて、つい反対方向を向く。

ぞわりと俺の背筋を寒気が走った!

い、嫌な予感がする・・・・明日・・・・。


「なあ兄貴!久しぶりに二人で風呂入ろーや!」
「はぁッ?!」
「ええやん!昔は一緒によー入りよったやん!久々に一緒に入ろうや!」


・・・・有岡、何でお前が過剰に反応するんだよ。

普通俺だろ。俺が反応できなかったじゃねえか。

つーか、透・・・・お前・・・・っ

有岡の前で何てこと言ってくれてんだぁあああッ!あと抱きつくな!

ほら!怒ってる!雰囲気でわかるから!空気でわかるから!

俺自分の血の気が引いていく音聞いちゃったよどうしてくれんだ!!

お前有岡がどれだけ嫉妬深いか知ってんのか!知らねえよな!知っててもらったら困るけどな!!

・・・・まあそこも可愛いって思う辺り、俺も重症だよなぁ・・・・。

・・・・じゃ!なくてッ!!


「ば、馬鹿ッ!何言ってんだ!お前高2だろ!一人で入れ!」
「えー?!ええやん!兄弟の仲深めるためやろーッ!」
「嫌だッ!」


弟との絆より自分の睡眠時間確保と身の保証だ!!

と、透帰らせた方がよかったかも・・・・俺の腰と睡眠時間的に。

まあ金曜の内に寝たためしなんて、有岡と付き合いだしてからないに等しいんだけどな。

あいつもなぁ、高2だからヤリたい盛りだってわかってんだけどなぁ。

でも26の男に毎晩欲情すんのもどうかと思うわけよ。26の男だぜ?

俺の高2なんて・・・・んー、語んのやめとこう。


「ねえせんせー、今日俺に18世紀の歴史教えてくれる約束だったよな?まさかすっぽかす気?」
「あ、そ、そうだったな!ほらわかっただろ透!無茶言うな!」


ナイス助け舟有岡!でももっと早く言えよ!!

引き剥がそうにも、こいつマジで俺に抱きついてるから離れない!

くっそ最近のガキはマジで腹立つ・・・・!


「何でやねん!ええやん別に!そんなんすぐ終わるやろ!」
「は?何言ってんだお前。18世紀なめんなよ」


・・・・え?何?どうしたんだよ・・・・。

何だよこの不穏な空気・・・・何でそんな睨み合ってんだよ・・・・。

マジでこいつら俺がいない間に何やったんだ・・・・?


「大体、そんなしつこかったらお兄ちゃんに嫌われんぜ?透クン」
「自分も、時間外勤務の無給料で先生働かせてええんかい、のう有岡クン?」


え?何?何?!何なんだよこいつら!!

何でこんな仲悪いんだ?!初対面だよな?!何で?!!

二人は今にも胸倉を掴みあいそうな雰囲気で、しかも至近距離で睨み合ってる。

な、何でぇ・・・・?

お、俺的には、男とは言え恋人と、義理とは言え弟は仲よくしてほしいんだけど・・・・。

・・・・まあ非公認だけどな。

二人で何か言いあってるみたいだけど、声が小さすぎて俺には聞き取れない。

聞こえたのは「兄弟」と・・・・「諦めろ」?どういう意味だ・・・・?

俺は睨み合うこの二人を、おろおろしながら見比べることしかできなかった。

ものすごい形相で睨み合う二人の目の間で、バチバチと散った火花が見えた気がした・・・・。

しょ、初対面でこの仲の悪さって・・・・あ、でもある意味似てる?


「な、なあお前ら、どうしたんだ?何もめてんだよ・・・・」
「「お前の所為だよ
         じゃ!!」」


同時に振り返った瞬間俺が怒られた!

え、何で俺キレられてんの?何で俺がキレられてんの?

何なんだよ!俺が悪いって言うのか?!意味わかんねーし!!

びっくりしてる俺なんて既に無視して、また至近距離で睨み合ってる。

・・・・つーか・・・・何か、こいつらの背後に何かどす黒いものが見えるような・・・・。

・・・・何これ・・・・殺気・・・・?いや、殺意?

あれ、これ止めないとヤバイ感じじゃね?


「ま、まあとりあえず、三人で晩飯食えばいいだろ?な?」


自分でも引きつってることがわかってる笑顔で二人を何とか宥める。

有岡は不満そうだったけど、俺の顔を見て渋々って感じで頷いた。

俺が本当に困ってるって、ちゃんとわかってくれてるんだな・・・・。

そして、問題がこいつだ。


「何でやねん!あんな奴部外者やん!なあ兄貴!あいつ帰らせようや!!」
「いいだろ別に。大体、お前さっきの話聞いてなかったのか」
「せやけど!俺兄貴と二人だけがええねんって!」


・・・・ったく、本当に・・・・こいつは・・・・。

俺は透に振り返ると、ちょっとびくっとした透を睨んだ。


「いい加減にしろ。我儘言うな。義父さん呼んだっていいんだぞ」


俺の言葉に透はうぐっと言葉を詰まらせた。

呼んだら確実に大目玉食らって連れて帰られるに決まってるからな。

透は渋々の体でわかった、と小さく答えた。


「俺兄貴が作ったハンバーグ食いたいーッ!」


・・・・久々に、こんな深々と溜息吐いたかもしんねえ・・・・。

こいつは、透は昔からこうだ。

自分中心というか、我儘というか、空気が読めないというか。


「無茶言うな。冷蔵庫ん中すっからかんなんだぞ」
「えーっ」


えー、はこっちの台詞だよ。冷蔵庫見てこい馬鹿。

・・・・つーか、ハンバーグとか・・・・何年作ってないだろ・・・・。

・・・・そして何で有岡は若干不機嫌そうなんだ。


「あーあ、兄貴のハンバーグめっちゃ美味いのに。残念やなぁ」


しつけえなぁ・・・・ったく。お袋に作ってもらえよ。

んで・・・・何で有岡はキレてんだ・・・・?

何か、俺ここにいてもいいことないような気がする。

有岡置いてさっさと引っ込むか。


「ちょっと待ってろ。何か探してくるから」


はいはい退散退散。

しかし、困ったな・・・・食料ねえよ。

とりあえず、この辺に保存食があったような・・・・お、あった。

『ご飯にかけてチンで完成!本場手作り風クリィ〜ムドリアとろぉ〜りチーズたっぷり入り』

・・・・美味いのか?これ・・・・本場ってどこだよ。

賞味期限・・・・お、来年の4月までか。まあ保存食だしな。

箱の中には丁度人数分の袋が三つ。・・・・レトルトか。

・・・・有岡、怒るかな。あいつ冷凍とかレトルト嫌いなんだよなぁ・・・・。

前に俺ん家でまったりしてたとき昼飯に出したら、めちゃくちゃキレられたんだよなぁ・・・・。

まあ背に腹は変えれないということで・・・・飯飯・・・・炊いてるわけねえよなぁ・・・・。

飯ー飯はっと・・・・はい出ましたレンジでチン。

・・・・めちゃくちゃ有岡にキレられそうだ・・・・。

とりあえずパッケージ入りの白米をレンジに入れてチンしてる間考える。

・・・・あのパッケージのまま出したら、有岡怒るよなぁ・・・・。

・・・・皿に移すか。めんどくせーけど。

白米をレンジで加熱してる間に、沸かした湯にレトルトの袋を入れる。

グラタン皿は・・・・食器棚の一番上か・・・・。

同じタイプのグラタン皿を二枚、違う柄のグラタン皿を一枚。

・・・・ほ、埃被ってる・・・・。

俺の料理は皿洗うから始まんのか・・・・いや、食い物を探すところからだったな。

とりあえず埃まみれの皿を洗剤を泡立てたスポンジで綺麗に洗って、泡ごと埃を流して、キッチンタオルで皿を拭く。

三枚すべて拭き終わったとき、ちょうどタイミングよくチンッとレンジが音を立てた。

熱々になったパッケージを取り出して、中の真っ白の飯を皿に移す。

鍋からレトルトの袋を取り出して、ムラがないよう加熱したての飯にかけていく。

またその三つをレンジの中に入れて、オーブンモードで再び加熱。

スチール製の黒のバーチェアに座ってやっと一服。

煙草を一本取り出して咥えて、各部屋に一つは必ず置いてあるライターで火を点ける。

肺いっぱいに煙を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。

・・・・有岡は、俺が煙草を吸う姿が好きだってよく言うなぁ・・・・。

空になった箱をぐしゃっと音を立てて潰して、まったく用をなしてないゴミ箱へぽい。

ずっと有岡ん家入り浸りだからな・・・・そろそろ細かいところ掃除すっかな。

チンとまた音を立てたレンジに振り返って、やっぱり部屋に一つ置いてある灰皿に煙草を押しつけた。

これまた引っ張り出してきた埃まみれだったトレイに皿を三つ載せる。

俺の名誉のために言っとくがちゃんと洗ったからな!流石に俺もそこまで横着じゃない!

それを持ってリビングに戻ると、・・・・何でまた睨み合いしてんだこいつら・・・・。

とりあえず熱々のそれをガラスのローテーブルに載せる。

じろりと俺を見た有岡の視線を華麗にスルーして、綺麗に洗ったスプーンを皿に添えて置く。

めちゃくちゃ不満そうな顔でじっとドリアを見下ろしている。

・・・・んだよ・・・・嫌なら食うなよ・・・・。


「めっちゃ美味そうやん!兄貴作ったん?!」
「いや、レンジでチン」


満面の笑顔だった透の顔が、俺の言葉でビシっと固まった。

あ?何だ?文句あんのか?

横で何故か有岡が勝ち誇ったような顔して笑ってる。


「せ、せやけど俺のために探し出してきてくれたんやんな!ホンマおおきに!」
「俺もいるぞ」
「んじゃ、いっただっきまーす!」


・・・・あ、有岡がこんな苛立ってる上に殺気立ってるの、初めて見た・・・・。

俺有岡のマジギレ見たの一回だけだし、流石に殺気立たれたことないし。

やがて有岡はスプーンを持つと、これでもかってほど不満そうな顔でドリアを見下ろす。


「・・・・ます」


一口食った瞬間、見る見る有岡の眉間に皺が刻まれていく。

・・・・今度から、日持ちするもの冷蔵庫ん中入れとこう・・・・。

異様に重たい空気を感じながら、重苦しい食事が終了。

さっさと透風呂入れて食器片付けて、透がいない間に有岡の機嫌とろう・・・・。


「ほら透。さっさと風呂入れ」
「えー?!一緒に入ろうや!!」
「嫌だっつってんだろ!さっさと行け!」


まだ言ってんのかこいつしつけえな!!

俺は食器を持ってさっさとキッチンに引っ込む。

透が風呂場へ行く気配に、俺はまた溜息を吐いた。

さっさと食器片付けて、少しでも有岡の機嫌とろう・・・・。

俺も、まあ、何つうか・・・・有岡といちゃいちゃできなくて?まあ、寂しかったし?

・・・・ぜってー言ってやんねえけど。

流し台に皿を置いて、俺は素早く皿を洗っていく。

・・・・あれ、ちょっと待てよ?

透が風呂に入ってるってことは、俺と有岡は今二人っきりってことで、有岡は今機嫌悪くて・・・・。

・・・・あれ、俺今ヤバイ状きょ


「せーんせっ」


有岡の声に、俺の肩が自分でもわかるほどびくりと大きく跳ねた!

振り返っちゃいけない。振り返っちゃいけないことはわかってる。

でも振り返らなくてもどうせ同じだってこともわかってる。

拒否する首を無理矢理捻って、自分でもわかるほど顔を引きつらせて有岡に振り返る。

有岡はキッチンのドアに寄りかかって、腕を組みながら俺を見てにっこりと笑った!

ぎゃああああ!ほら!目!目!据わってるから!目ぇ笑ってないから!!透の馬鹿野郎ぉおおッ!!!

ふ、振り返らなきゃよかった・・・・俺は今見てはいけないものを見てしまった・・・・!


「あ、有岡、あの」
「久しぶりに弟に会えて嬉しかった?俺との約束破って。それともそれが目的?」
「いや、あの、その」


SEXにお互い余裕ができた頃に二人で決めた約束。

SEXする日は絶対火曜と金曜と土曜の夜。週明けに寝不足は辛いって俺が言うから二人で決めた約束。

有岡はちょっと不満そうだったけど、俺が本当に辛いって言うとわかってくれた。

まあ若いもんな。今ならヤりたい盛りだもんな。現に週3日なんてほっとんど守ってもらってねえしな!!

目を細めてゆっくりと近寄ってくる有岡に、俺は思わず後退りしようとする。

手首に当たった流し台の縁に、俺は逃げ場がないことをやっと思い出した。

目の前まで来た有岡を、俺はただ愕然と見上げる。こ、怖い・・・・!違う意味で!


「あ、ありお、あッ!」
「恋人との約束破って、二人も弄んで、酷い人だね、先生」
「な、何が・・・・ひぁッ!」


有岡の手が俺の肩を掴んだ瞬間、有岡は俺の身体を簡単に反転させて流し台に押し付けた!

Tシャツの中に突っ込まれた手が、俺の身体を厭らしい動きで撫でまわす!

その手の動きと温かさに、俺の身体が情けなくびくびくと震える。

有岡に触れられただけで感じてるなんて、ひどく情けないと思った。

高校時代の俺が見たら、きっと情けなくて死ぬだろうな・・・・。


「や、やん・・・・あ、ありお、か・・・・だ、だめ・・・・」
「ヤるたびに感度よくなってるよね。可愛いよ、先生」
「だ、だめ有岡・・・・と、とおる、いるからぁ・・・・ッ」


有岡がイラッとしたのが、空気でわかった。

何で、俺、何かこいつの気に障ること、言った?

小さな舌打ちが聞こえた後、首筋に強く噛みつかれた!

強く強く吸い上げられる感覚に、俺の身体がびくりと縦に跳ねて、小さな声が漏れる。

Tシャツの中を這いまわってた手がさらに奥まで突っ込まれて、鎖骨をつつーっと撫でられる。

首筋を這う熱い舌にびくびくと震える身体が恨めしい。


「や、や、あ・・・・だ、だめ・・・・ありお、か、あ、あ、あ・・・・ッ」


思わず逃げようと顔を背けたら、有岡の手に髪を掴まれた。

肩から耳の付け根にまで這い上がる熱い舌に、身体から力が抜けていく。

正直足はがくがく震えていて使い物になんてならない状態で、俺が今立っているのは根性だけでだ。

力が入らない身体を支えるために、有岡に与えられる快感に耐えるために、俺は必死で流し台を掴む。

散々俺の身体を這いまわっていた有岡の熱い手が、下に、伸びる。

恐怖と羞恥に、俺の身体がびくりと跳ねた!

これ以上は、駄目だ。流される。


「やだ・・・・や、やだ・・・・ありおか・・・・だめ、だめぇ・・・・っ」
「何言ってんの先生?今日はエッチするって約束の日でしょ?」
「そ・・・・そうだけど・・・・でも・・・・でも・・・・っ」


有岡は余裕ない笑顔で俺を下から覗きこんで、ぺろりと自分の唇を舐めた。

駄目だ、こいつ、本気だ。

本当に、駄目。これ以上は、マジで、


「や、やだ・・・・ありおか、おれ、ここじゃいやだ・・・・っ」
「ふーん、じゃあ寝室行く?言っとくけど、あいつが風呂から上がってきてもわかんないからね」
「ヤ、ヤんなきゃいいだろぉ・・・・っ」


俺の言葉に、有岡の眉がぴくりと顰められた。

しまった。俺、今、墓穴掘った。

俺を慈しむような目が、一瞬で冷えていく。

どうにかしなきゃと思った瞬間、有岡の手が緩く立ち上がってた俺のモノを握りしめた!

いきなりの刺激と痛みに、俺の身体が大きく跳ねた!


「ひ、ぐ、いた・・・・っ」
「そんなこと言うんだ?ホントに酷い人だね、月代」


有岡の声に俺の身体がびくりと震える。

有岡が俺のことを「月代」と呼ぶときは、ドSスイッチが入ったときだ。

駄目だ。ドSスイッチが入ったときのこいつは何するかわからない。

どうにかしなきゃと思うのに、そのたびに有岡は俺の思考を邪魔する。


「んぅッ」
「はい、痛いのイヤならちゃーんと舐めてねー」


駄目だ。これ以上こいつをマイナスに刺激したら、マジで何されるかわからない。

俺は身体を震わせながら、口のナカに突っ込まれた有岡の指に舌を這わせた。

ドSスイッチが入った有岡は、俺が泣こうが喚こうが痛がろうが絶対にやめない。

・・・・後で土下座する羽目になんのはこいつなのにな・・・・。

俺の舌にさらに指を絡めようとするように、有岡の指がくちゅりと俺の口のナカで動いた。


「ん、く、ふ・・・・ん。んふ・・・・ん、ん・・・・っ」
「そうだよ、先生。いい子だね・・・・」


お、俺の方が歳上なのに・・・・ッ!

耳元で囁かれる甘く低い声と耳にかかる吐息に、俺の肩が震える。

ただでさえ熱い耳に熱い舌が這う感覚に、俺は思わずギュっと目を閉じた!

小さく音を立てて耳に差し込まれたそれに、俺は本気で泣きそうになって薄く目を開ける。

ふるふる震える俺を見て、有岡はごくりと喉を鳴らした。

こいつは、薄く目を開けてる俺を見ていつも興奮する。俺そんなエロい顔してんのか?

・・・・でも自分が感じてる顔なんて、絶対見たくない。

するりと俺の足を這った有岡の大きな手に、俺の足がびくりと跳ねた。

もう明日の睡眠時間とか、腰とか、体調的な問題とか心配してる場合じゃない!

この場合最優先されるのは透に対する俺の兄としての威厳だ!

こんな情けない姿、あいつにだけは絶対に見られたくない!!


「あ、ありおか、おねが、今日は、やめて・・・・明日、明日何でもしてやるから・・・・っ」
「えー?それもいいけど、ここまでしといて明日までお預けはなしだろ?」


ほら、と言いながら俺の尻に股間を押しつける。

ごり、と音がするんじゃないかと思うほど硬い有岡のそれに、俺の肩がびくりと跳ねる!

何でこいつはこんな興奮してるんだとか、しかも興奮してる理由が俺だとか考えた瞬間、顔がさらに熱くなった。


「先生だけだよ。先生だけ。俺をこんなに興奮させんの」
「や、や・・・・そ、そんな、知らな・・・・あっ」
「俺をこんなに夢中にさせた先生が悪いんだからね」


有岡は俺のそこにするりと指を這わすと、ゆっくりと指を捻じ込んだ。

びくりと震えた身体を叱咤しながら、俺は必死で流し台を掴む手に力を込めた。

ゆっくりと、俺を傷つけないように必死で優しくしようとする有岡が愛おしい。

いくらこういう行為に慣れたとはいえ、流石にローションなしはきつい。

ぴりぴりとした、正直言うと耐え難い痛みに、俺は身体を震わせながら必死で耐えた。


「ん・・・・ッ、く、は・・・・はあ・・・・あ、あ・・・・っ」


駄目だ。大丈夫、まだ、耐えられる。

確かに与えられる痛みは耐えがたいけど、惜しみない愛をちゃんと感じてる。

だから、俺は有岡が俺にどんな酷いコトをしようが痛いコトをしようが、甘んじてそれを受け入れる。

だってこいつはガキだから、不器用だから、どうすればいいのかまだちゃんとわかってないから。

俺に与えられるそれを俺が受け入れないで、一体誰が受け入れる?

まあ無理矢理のときはそりゃもう俺に怒られてるけどな。いい加減わかれよ。


「んっ、んっ・・・・ッ」
「痛い?」
「んっ・・・・ちょっと・・・・」


俺がこう言うと、いつも有岡は不機嫌そうに眉を寄せる。

それから、その手が、殊更ゆっくり、優しくなるんだ。

俺、大丈夫だって、平気だって言ってるのに・・・・。

空いていた有岡の手が俺の顎を掴んで上を向かせ、無理矢理唇を合わせる。

突然のことに驚いて、体勢の所為で開いた口のナカに舌を捻じ込まれる!

思わず逃げた舌を絡みとられて、強く吸い上げられた瞬間、俺の足から完全に力が抜けた!

床で膝を打つ前に腰を有岡の腕に掬い上げられ、ずるりと指を引き抜かれる感覚に背筋が粟立つ。


「挿れるよ先生。ナカに出していいよね?」
「ま、まって!だめありお、あァッ!」


一気に捻じ込まれた有岡のそれに、俺は悲鳴を上げることもできずに背中を反らす!

た、ただでさえそれも無駄に育ってんのに、んなもん無理矢理突っ込みやがって・・・・!

がくがく身体を震わせながら流し台に突っ伏した俺に、有岡は後ろからキスをする。


「は、はー・・・・はぁ・・・・い、いきなり、挿れんな、て、いつも・・・・ッ」
「うん、ごめん。でもいいよね?俺のこと好きだからいっつも許しちゃうしね」


にやっと笑った有岡に、俺は思わず言葉を詰まらせた!

た、確かに、否定はしない・・・・最近ずっとこんな感じだ。

だ、だって有岡がナマでしたいって言うから・・・・。

・・・・あれ、俺相当有岡に甘い・・・・?

ぐうと言葉を詰まらせた俺に、有岡はそっと微笑んだ。いつもの、笑顔。

俺の胸に回った有岡の逞しい腕に、そっと手を重ねる。

ああ、俺、昔から人に触られるのって嫌いだけど、有岡に触れられるのは好きだ・・・・。

逞しい腕も、温かい大きな手も、広い胸も全部好きだと思ったら、自分に苦笑せざるをえなかった。


「先生、動くよ?ナカに出していいよね?」
「・・・・もう、今日だけだからな」


・・・・これ言うの、今日で何回目だろ・・・・。

日が経ってどんどん有岡を好きになっていくにつれて、俺どんどん有岡に甘くなってる・・・・。

有岡の腕に力がこもって、ぎゅうっと抱きしめられる。

ゆっくりと腰を揺すられ、有岡のモノにナカを擦られる微かな痛みに俺は思わず顔を顰めた。

次第に痛みが消えて、俺の頭の中を快感だけが占める。

・・・・今、気持ちイイと思った自分を殺したいと思った。いや、気持ちヨくないわけじゃないんだけど。

段々荒く、激しくなっていく有岡の律動に、俺は手を添えた有岡の腕に指を立てた。


「は、あッ!あ、あっ、あっ、んッ!や、ありお、か、もっと、ゆっく、りぃッ!」
「ッ、はあ・・・・先生、静かにしてないと聞こえるよ?」


耳元で熱い吐息と一緒に囁かれた脅し文句に、俺の肩がびくりと跳ねた。

そ、そんなこと言われたって・・・・だってお前が・・・・!

有岡の律動に揺さぶられながら、俺は有岡がしやすいように必死で膝に力を込める。

い、いや、有岡のためとかじゃなくて、さっさと終わらせてほしいってだけで!

・・・・誰に言いわけしてんだ、俺・・・・。


「あ、はッ!ん、んっ、あ、あ、あっ、あ、りお、かぁ・・・・ッ!」
「せんせ、俺・・・・イキそう・・・・っ」


ぎゅっと身体を抱きしめられ耳元で囁いた有岡の熱い吐息が、俺の耳を掠める。

そのくすぐったさと、有岡の熱っぽい声に、俺の身体が小さく震えた。

思わず閉じていた目を開けて、力が入らない腕を持ち上げて有岡の頬を指先で撫でる。

どうしても、キス、したくなって、首を捻って有岡の唇に触れるだけのキスをした。

足りない、と有岡は無意識だろう俺の耳元で低く囁いて、身を乗り出して深く俺の唇に自分のそれを合わせた。

俺も深く有岡を味わいたくて、有岡の頬に添えていた手を有岡の頭に回して髪を掴んだ。

お互いの呼吸すら奪うほど深くキスを交わして、何度も何度も、夢中になってキスをした。

やがてお互い深く息を吸いながら唇を離すと、有岡は酸欠で潤んだ、情欲に満ちた獣のような瞳で俺を見つめた。

有岡のこの目が、俺は好きだ。だって俺に欲情して、感じてくれている証拠だから。


「先生、好きだ、先生・・・・ッ」
「あ、は!ん、ありお、か、あ、あ、あッ!」


一層激しく打ち付けられる有岡のそれに、俺の身体がびくんと大きく跳ねて背が反れた!

堰を切った熱に悲鳴を上げかけた俺の口を、有岡の大きな手が塞ぐ!


「ん、ふ、んんんんッ!!!」


頭の中が、ショックを受けたように真っ白になる!

やがて頭の中の白が引くと、自分のナカにしっかりと注ぎ込まれる熱を感じた。

俺の後ろで有岡が深く深く息を吐いて、俺の口から手を離す。

ゆっくりと引き抜かれていく有岡のそれに、俺はもう立っていられなくなってその場にへたり込んだ。

俺と同じようにへたり込むように有岡は俺の後ろに座り込むと、俺の身体をぎゅっと抱きしめた。


「は、はあ、は・・・・せんせ、大丈夫?」
「ん・・・・は、はあ、あ、ん・・・・だい、じょ・・・・ぶ・・・・」


快感の余韻が冷めない俺の身体は、まだ小刻みに震えてる。

涙でぐちゃぐちゃになった俺の頬に、有岡は小さくリップ音を立ててキスをした。

俺はとにかく汗で張り付く前髪が邪魔で、まだ力が戻らない手で無理矢理髪をかき上げた。

前髪切るかな・・・・ん?


「有岡・・・・?」


黙り込んだ有岡に、俺は不思議になってその顔を覗き込んだ。

有岡の目はもう、さっきと同じ目をしてた。


「有岡?どうし、ひあッ!ちょ、や、何、やめ・・・・ッ」


有岡は突然身を乗り出すと、俺の後ろに座り込んだまま俺のモノを咥えた!

俺は必死になって有岡の髪を掴むと、躍起になって短くなったその髪を引っ張る!

有岡は俺のモノを咥えたまま喉の奥で呻くと、恨めしそうな目で俺を見上げた。


「せんふぇ、いはひひょ」
「あッ!ば、ばかっ!咥えたまま、あ・・・・ひ、や、あ・・・・しゃべん、なぁ・・・・ッ」


有岡の吐息と舌の動きに、俺は思わず有岡の髪を握りしめたまま顔を伏せた。

俺のその顔を見上げて有岡は目を見開くと、顔を上気させてごくりと喉を鳴らした。

何をお気に召したのか、有岡は俺のモノを音がするほど強く吸い上げる!


「あんッ!ひあ、あ、あ、や、だ、めぇ、ありお、か、んッ!んッ!」


思わず喉を反らせて、身体が震えるほど力を込めて俺はその快感に耐える。

イきはしなかったが耐えるのに力を使った俺は、上げていられなくなった頭をがくりと落とした。

薄く目を開けると、有岡は俺を見上げてごくりとまた喉を鳴らす。


「先生」


身体を起こして俺の耳元で低く囁く有岡に、俺の肩がびくりと跳ねた。

怖々振り返った俺に、有岡はそっと目を細める。

ゆっくりと、その大きな手を俺に差し出した。


「おいで」


俺の肩がまた無意識にびくりと跳ねる。

有岡は俺をまっすぐに見つめて、また目を細める。

だめ・・・・俺、有岡のこの顔に・・・・弱い・・・・。

普段はガキな有岡が、たまに見せる、大人の男のこの顔に、俺は情けないほど弱い。

だってほら、気付いたらもう有岡の手を握り返してる。

促されるままに胡坐をかいた有岡の足を跨いで有岡と向かい合わせに膝立ちになる。

既に硬くなってる有岡のモノをそこに押し当てると、有岡はそっと俺の耳に唇を寄せた。


「先生、ゆっくりでいいよ。そう、大丈夫?無理してない?」
「ん、ん・・・・っ、だい、じょ、ん・・・・ッ」


俺は有岡の肩にしがみついて、ゆっくりと腰を落とした。

正直、一気に腰を落とすなんてとてもじゃないが怖くてできない。

痛くもないし辛くもないが、やっぱり苦しい。


「そう、上手だよ、先生。ゆっくりでいいからね」
「ん・・・・っ、ん・・・・っ」


俺の頬に唇を押し当てて、有岡は優しく俺に囁く。

やっぱり、有岡が挿れるのと自分で挿れるのじゃ、違う。

特に俺の場合はこういう状況が少ないから、自分でってことに慣れてない。

俺の腰に添えていた有岡の手に力が入ったのを感じて、俺は何故か焦って有岡を見た。


「や、やだッ」
「せんせ?」
「や、やだ、いれちゃやだ・・・・っ」


俺の言葉に、有岡は驚いたように目を丸くした。

そうだよな。お前的にはさっさと突っ込んでイキたいよな。

でも、でも・・・・!


「お、おれがいれるから、いれちゃやだ・・・・っ」


でも今日は駄目だ!今度こういうコトになったら絶対最後まで自分でやるって決めたから!

「たまには相手に自分で挿れてほしいよなぁ。ま、俺らは多いけど、お前らの場合少ないんじゃね?有岡もたまにはって思ってるかもよ」

って加納だって言ってたし・・・・。

有岡は俺を見上げて、目を見開いて、顔を真っ赤にさせた!


「じゃあ先生、ゆっくりでいいからね。無理しちゃだめだよ」
「う、うん・・・・っ」


大丈夫だ。できる。もうすぐ三十路だろ。怖くねえよ。

俺は有岡の肩を掴む手に必死で力を込めて腰を落とす。

有岡が今すぐ奥まで突っ込んで動きたいって思ってるのが、伝わってくる。

それでもじっとしてる有岡に、俺は泣きたくなった。

どうしよ、有岡は早くイキたいのに、早く、早くしなくちゃいけないのに・・・・!

どうにもこうにも焦った俺は、思わず片膝を上げた。

けど、さっき一回イカされた身体だ。片足だけで全体重を支えられるほどの力があるはずがない。

フローリングで足がずるっと滑った瞬間、俺は一気に有岡のモノを奥まで飲み込んだ!


「ひ・・・・ッ!あ、あ・・・・っ」


自分でも突然の刺激にどうしようもなくて、とにかくどうにかしたくて背を反らせて目を見開いた。

有岡は俺の身体を力いっぱい抱きしめると、俺の肩に額を必死で押し付けた。


「・・・・はっ!はっ・・・・ば、ばか、何、やってんだよ・・・・ゆっくりで、いい、つった、ろ・・・・っ」
「ひッ・・・・はーッ!はー・・・・はー・・・・だ、だって・・・・だってぇ・・・・ッ」


自分でも驚いて、ぼろぼろと涙が溢れだした。

えぐえぐ嗚咽を上げて泣く俺の髪を掴んで、有岡はぎゅっと俺を抱きしめる。


「先生、動くよ?いい?」


やがて俺が落ち着いた頃に有岡は俺の顔を覗き込んで問うた。

俺が頷いたのを見ると、有岡は俺の身体を離して腰に手を添える。

有岡は俺の腰を両手で掴んで揺すりながら、下から強く突き上げた!

慣れないその律動に俺の身体はびくりと跳ねて、行き場のない手で耐えようと必死で拳を握った。


「ひ、あ、あッ!や、あ、あっ、ふ、深・・・・ッ!あ、あ、あっ」


心臓まで届くんじゃないかってほど深く深く捻じ込まれる有岡のそれに、俺は背を反らせて喘ぐ。

がくがくと揺さぶられる力の入らない身体は、まるで自分のものじゃないみたいだ。

俺はこの快感に耐えたくて、有岡の肩に必死で指を立てた。

有岡は俺を見上げると、とろんとした目で俺の首筋に吸いついた!


「は、あ、あァッ!や、だ、め・・・・ありお、かぁ・・・・ッ」


首の筋を沿って這い上がる有岡の熱い舌に、俺の身体がびくびくと跳ねる。

どうしようもなくなって有岡に必死で抱きついたら、有岡は俺の首に唇を押し当てたままふっと笑った。


「先生、そんなしがみつかれたら、動きにくいよ」
「や、だ、だって・・・・だって・・・・っ」
「そんなに気持ちイイの?」


悔しいけど、そのとおりだ。もうどうにかなりそう・・・・!

俺の腰を掴んでいた有岡の手が俺の頬に触れて、有岡の方を向かされる。

俺の涙を舐めとる熱い舌に、俺の喉から声を漏れた。

その間にも与えられる快感に、俺の頬をまた涙が伝った。


「あ、あッ!あ、あ、あ、ぅ、んんッ!は、はぁ、あ、は、はッ!」
「ね、せんせ、俺のお願い聞いて?」


有岡のキスを額に受けながら、俺は視界が霞む目で有岡を見た。

有岡は俺の鎖骨に舌を這わせながら、それでも俺の腰を揺すり続ける。


「は、今後一切、俺と、イイ雰囲気のとき、つーかもういっそ二人っきりのとき、俺以外の男の名前、言わないで」
「あ、は、んッ!あ、あッ、あ、な、なん、で・・・・?あっ、あっ、アッ!」
「はあ・・・・っ、なんで、も・・・・!」


言葉尻と一緒に強く突き上げられ、俺は思わず背を反らせて喘いだ。

鎖骨にキスを落とされ、首筋を伝う舌に俺は思わず目を閉じる。


「は、それか、ら・・・・、・・・・今度俺にもハンバーグ作って」
「・・・・はあ?」
「いいから、作って。作ってくれなきゃ、俺やだからね」


何言ってんだ、こいつ・・・・?

こんなときに冗談かと思えば、有岡の目は至極真面目だった。

涙を掬うように目にキスを落とされ、さらに激しく腰を揺さぶられる!

激しく前立腺を抉られ、俺は与えられる快感にどうにもできなって必死で有岡の胸に抱きついた。


「ひ!あ、あ、ぅ、だ、だめ、お、おく、あ、あたって・・・・やッ!あ、アッ!」


震える腕を有岡の背中に回して、快感に耐えたくて俺は必死で指を立てた。

それですらこの快感をどうにもできなくて、有岡のシャツを握りしめてさらに強く抱きついた。


「は、あ、あ、あァアッ!い、イク、イくッ!ありおか、ありおかッ!」
「・・・・ッ、先生・・・・っ」


最奥を一際強く突かれた瞬間、俺の身体が大きく縦に跳ねた!

頭の中が真っ白になって、声を上げたいのに吸い込んだ空気に喉を押しつぶされる!


「ア───・・・・ッ!」


俺の喉から漏れたのは、引きつったか細い悲鳴だった。

痛いほど有岡は俺の身体を強く抱きしめると、俺のナカで再び吐精する。

強く閉じていた目を開けると、強く閉じすぎていた所為と涙の所為で視界が霞んで何が何だかわからなくなっていた。


「ひ、は、あ、あ、あ・・・・あ、りお、か・・・・っ」


快感の余韻でがくがく震える俺の身体を、有岡はぎゅっと強く抱きしめる。

俺は震える力の入らない腕を必死で持ち上げて、有岡の髪を掴んだ。

有岡は自分のモノを俺のナカから引き抜くと、今度はさっさと俺の服を簡単に整えた。

自分の力じゃ座るだけもできない俺の身体を抱き寄せながら、有岡は流し台に手を伸ばす。

小さな声でお、と呟くと、有岡は器用にキッチンペーパーの箱を指先だけで手繰り寄せた。

・・・・キッチンペーパーの箱、そんな近くに置いてたっけ・・・・?カウンターに沿えて置いてたような・・・・。

有岡はキッチンペーパーで俺と自分の身体を拭うと、今度はきちんと俺に服を着せて自分も整えた。

やっと快感の余韻も引いて、息も戻った俺はふう、と息を吐く。

すると有岡の大きな暖かい両手が、俺の両頬をそっと包み込んで、啄ばむような触れるだけのキス。

だめ、これじゃ足りない。


「ん、やだ」
「お?」
「だめ、もっと」


有岡の胸倉を掴んで引き寄せて、俺は自分から有岡の唇に自分のを合わせた。

有岡はそっと目を細めて、俺の頭に手を回して俺の髪に指を通す。

やっぱ、有岡とキスすんの、気持ちイイ・・・・。

お互いの身体を抱き合って夢中でキスする俺たちを、透はただ無言でカウンター越しに見下ろしていた。





(なあ有岡。俺は自分の身体や心についた傷より何より、お前の傷ついた顔が一番痛かったよ)





<義弟編前篇・Fin>










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